「希望の薬」
とある国で、希望の薬が開発された。
これを飲めば、どんな人でも死ぬときに希望が持てます。
と開発者が言った。
最初はほとんどの人が信じなかったが、開発者が宣伝を繰り返すうちに、欲しいという者がよその国からも訪れるようになった。
どんなことが起きても死ぬときは希望が持てる薬です。
大海原で転覆した船に閉じ込められても
洞窟で岩が崩れて退路を断たれても
たとえあなたが人類最後の一人になったとしても
希望とともに死の瞬間を迎えられるのです。
開発者は淡々と、しかし、溌剌とした大きな声で効能を語り、人々に勧めた。
お金を持っている者たちがその薬を求めて殺到するようになった。
生まれた我が子に贈りものとして与える親がどの国でも増えていった。
希望の薬こそが希望として崇められた。
いわゆる悪人たちさえもその薬を欲しがった。
支配屋、奴隷屋、戦争屋。
極悪非道な行いを日常としている者たちが群がるようになると、あっという間に薬の奪い合いになった。
あちこちの国で争いが起き、薬を独り占めしようとする者たちが殺し合いを始めた。
開発者は嘆き悲しみ、モノが食べられなくなってしまった。
髪の毛は抜け、目は窪み、骨だけがかろうじて生きる役目を果たそうとしているかのように主張をしながら痩せ細り、ミイラのような風貌に成り果てた。
いよいよ、天に召されるときになって開発者は呟いた。
薬を飲んでいて良かった。
© 2024 Kou Imai
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これは詩というのかな?
ショートショートかな?
想像と創作がこんなにデトックスになるなんて知らなかった。
拙い作品だとしても、生まれてくるものは大事にしよう。(*^^*)