祝福
川沿いに並ぶ満開の桜を見に行った
散った花びらがお祝いのように風で踊り揺れていた
木の下にひとりの男が寝っ転がっている
見慣れた茶色い厚紙の上に横たわり
くたびれた布で顔を覆い隠している
それは大きな木であったから
わたしの側からはだいぶ距離があったが
公共料金とは縁のない暮らしをしていることが見てとれた
意識は夢の向こうで覚醒しているだろうか
それともわたしの足音や衣擦れを
無関心と警戒とのバケツに振り分けている最中だろうか
ぴくりとも動かない胴体からは知ることができない
男が失くしたものは仕事か家庭か思想か
あるいは失ったものなど存在せず
ただそこに彼の自由があるのかもしれない
縄張り意識の強いクマバチが花びらを追って飛んでいる
正しさを突きつけるな
ホバリングの羽音と共に男から境界線を引かれた気がした
頭が弾き出したいやらしい見分けが自分を隣の木に向かわせる
桜の祝福はうれしくも等しいことを思い出し背すじを伸ばす
舞う花びらに目的地はない
© 2024 Kou Imai
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自然界の調和、とてもとても敵いません。(*^^*)
今年も桜に見惚れられた、その感情を持っている自分にホッとします。
新緑のまぶしい季節に入っていきますね♪